薬膳料理シリーズ、本格的に始めます。

当ブログでは台湾料理のレシピに混ざって密かに人気の薬膳料理コーナー。材料の購入や質問・お問い合わせもたくさんいただいておりうれしい限りです。

薬剤師である筆者は、日本の某大手薬局チェーンの広報誌で漢方と薬膳料理をテーマにした連載もしています。そちらを通じて当ブログを訪れてくださった方々のためにも、薬膳料理の基礎のようなものを解説していきたいと思います。

「薬膳」という言葉自体は実はそれほど古いものではなく、ここ数十年で中国医学が復興し、成長していく中で新たに作られたものです。しかし東洋医学ではその成立の極初期から「食」と「治療」を密接な関係があるものとして捉え、まさに「医食同源」の考えの元発達してきました。薬膳はその思想と方法を現代に伝えるものと考えていただければよいでしょう。

本格的に解説を始めると中国医学と食と思想の歴史を紐解いていく膨大なストーリーになってしまいますが、ここではエッセンスだけ、ざっと薬膳の歴史を眺めてみることからはじめてみましょう。

1.神農と薬膳
炎帝とも呼ばれる神農は中国古代の伝説に登場する人物で、民衆に各種の農業技術を伝えた農業の始祖とされます。彼は新たな食物を見つける同時に、いくつかの食物に病気を治療する効果があることを発見したと伝えられ、薬物の性質を見極めるため実際に多くの薬物を使用し、性質によりそれらを分別したといわれています。東晋の時代に書かれた《捜神記》・巻一によると“神農以赭鞭鞭百草、尽知其平毒寒温之性、臭味所主、持播百谷、故天下号神農也。”と、赭鞭という鞭(?)を使って薬草を集め、毒の有無や体を温めるもの冷ますもの、味や香り、またそれらの栽培方法などに明るかったという記載があります。また前漢の時代に書かれた《淮南子》・巻十九にも神農が多くの薬を実際に口にして試したことが以下の様に記されています。“古者、民茹草飲水、采樹木之實、食蠃蠬之肉。時多疾病毒傷之害、於是神農乃始教民播種五穀、相土地宜、燥濕肥墝高下、嘗百草之滋味、水泉之甘苦、令民知所辟就。當此之時、一日而遇七十毒。” 人々が余りに無分別に様々な動植物を口にしては苦しむので、神農はそれぞれの土地に適した穀物の栽培方法を教え、また自ら多くの薬物を味わってはその効果を確かめ民に伝えたと記されています。

一説によると神農は古代中国の一部族(現在の苗族・羌族の祖)とも言われ、当時の最先端の農業薬物知識を持っていたと考えられています。薬物を求め各地を旅し、その効果を自ら確かめ、その知識を人々に伝えたその精神は、医療の発達した現代においても賞賛されるべき高貴なものです。中国医学史では医学祖として「黄帝」を、薬学の祖として「神農」の両名を神格視しており、それぞれ最古の医学書《黄帝内経》、最古の本草書《神農本草経》に名前を残しています。中国の一部では漢族は黄帝と神農の子孫であると考えられてもいます。

神農がその薬効を確かめ、民衆に伝えた薬物をまとめたといわれる《神農本草経》には365種類の薬物が記載されています。そのうちいくつかは現在でも食物として日常的に用いられているもので、これらは薬膳、食事療法の最も古い原料とされます。
2.《神農本草経》と薬膳
前漢の時代に書かれた《神農本草経》は文字によって記録された中国最古の薬物書といわれています。現代薬膳の世界においても資料として大いに利用されています。《神農本草経》はただ《本草経》または《本経》とも呼ばれます。

《神農本草経》に記載されている365種の薬物のうち、植物薬は252種、動物薬は67種、鉱物薬は46種で、それぞれの薬物の産地、別名、性質と効能が詳細に記されています。神農本草経の時代から中国医学の薬物は大部分が植物を原料とし、このため「薬(藥)」の漢字は草冠を持ちます。これら薬物を穀物を発酵させて作った酒に浸けて、病気に合わせて適当に調合することで「医(醫)」が始まりました。現在のように薬物を煎じた湯液が用いられるようになるのはずっと後代に入ってからです。また最初期の医学は呪術とも密接な関連を持ち、医(醫)の字は「毉」 とも書かれました。古代中国のシャーマニズム即ち巫術と密接なつながりが合ったことがわかります。

《神農本草経》 での薬物の記載、例えば人参(高麗人参)の項目にある”主補五臟、安精神、定魂魄、止驚悸、除邪氣、明目、開心、益智。久服、輕身、延年。”は現代科学による多くの研究の結果、それぞれの効果が立証されています。人参は薬膳料理でも多用される薬物の一つで、人参を使った代表的な薬膳料理は『人参炖鶏』、『人参炒鶏片』、『人参湯元』、『人参茶』、『人参酒』などたくさんあります。

《神農本草経》の薬物は現代科学の水準から見ても、その記述は妥当なものが多く、中でも前述の人参を始め、肉蓰蓉、沙参、杜仲などの薬効表記は非常に正確であることが知られています。ただし一部薬物の効能については研究により否定されてもおり、現在では毒性があるとして使用されなくなったものもあります。

3.五行説と薬膳
4.張仲景と薬膳
5.長桑君と扁鵲
6.華佗と薬膳
7.陳直と《養老奉親書》
8.李珣と薬膳
9.食医と薬膳

0 コメント :

 
日本で作れる台湾料理 © 2012 | Designed by Rumah Dijual , in collaboration with Web Hosting , Blogger Templates and WP Themes
FB FACEBOOK TW TWITTER